2015/12/30
年の瀬も迫り、一年の早さを感じつつほっとしています。
2015年は、企業のPR支援をなりわいとするなかで、日本におけるソーシャルとデジタルの意味合いの変化を感じた年でした。そこで2016年の展望をまとめてみました。
ソーシャルといえばこれまでは、Facebook、Twitter、LINEなどソーシャルメディア (またはSNS、ソーシャルネットワーキングサービス) を示す言葉として使われていました。ソーシャルメディアの文脈では今年、ビジネスSNSとしてのLinkeInの可能性、キュレーションメディアや動画の最新情報、Netflixの参入がもたらすテレビへの影響、などが気になるところでした。
一方この一年で注目は、 「ソーシャルメディアがどう使われ影響力を持つか」 から 「ソーシャルメディアを使うひとは何を志向しているか」 に移りました。それは労働人口のなかでデジタルネイティブが占める割合があがってきたことと相関するかと思います。
デジタルネイティブとは、生まれた時からデジタル環境にいる世代という意味で、専ら2000年の新成人 (今年35歳) 以下を指す言葉です。ソーシャルメディアの浸透で変わる世代を理解するための言葉として、 (もちろん20歳と35歳を同じ括りにするのはやや乱暴とは思いますが) ここ数年で使われる頻度が増えたように思います。
殊に2011年の東日本大震災以降、デジタルネイティブの意識変化がしばしば話題になります。
年配者は、仕事の虫として会社に張り付くお父さんと、家を守るお母さんからなる家族構成を重視。
若年者は、会社でなく自分の価値観や、家族を超えた人とのつながりからなる人間関係を重視。
個人差はあるものの、若年層の意識は、会社や家族からより広い社会へ、そして社会的責任や倫理観に向いているようです。
企業としては、今後の労働力や消費の中心となるデジタルネイティブに訴求するため、ソーシャル “メディア” よりもソーシャル “レスポンシビリティ”、社会に対して負う道義や責任にいっそう目を向けるようになってきています。
これまでのCSR活動に限らず、マーケティング4.0と呼ばれる自己実現に資するマーケティング論や、消費パターンが異なる層に向けたマーケティング活動、ブランディング強化のためのPR活動、若年の人材確保に注力する企業の人事施策など、幅広い分野で社会的観点が重要になっています。
デジタルネイティブの台頭が進むなかで、デジタルの意味も変わってきています。
デジタルマーケティングがさまざまなIT企業の注力分野になっていたのはわずか数年前ですが、社会の隅々まで数多とある機器やセンサーが蓄積するデータに起因してひとびとの暮らしから企業の生産活動まですべてが一変し、デジタル化による変化はマーケティングを大きく超えて、第4次産業革命に突入しようとしています。2015年はその技術背景を示す言葉としてIoT(Internet of Things、モノのインターネット)がキーワードとして使われましたが、今後は社会全体の変化を俯瞰的にとらえる見方として、デジタルトランスフォーメーションが語れるようになるのではないかと思います。
そもそもアナログからデジタルへの移行は、媒体や端末、情報、通信、製造、販売など様々な分野で過去数十年にわたり進んできました。今迎えようとしている変化がこれまでとどう違うかといえば、デジタル機器とそこから発せられるデータの天文学的な増加により、これまで単体だったデジタル活動が相互に連携して、新たな生態系的に進化しようとしている点といえるでしょう。AI(人工知能)の活用も進み、デジタルによる産業革命が進むと思われます。
IoTの世界市場は、今後4年の年間平均成長率17.0%にのぼり、2019年に1.3兆ドル規模になるとIDCは予測しています。
(引用:2015年12月14日 ZDNet Japan 「世界IoT市場は2019年に1.3兆ドル規模に--IDC」)
日本企業、市場もデジタル変革、産業革命と同期できれば、社会への関心が高い次世代の知恵と力をもってして、より明るい未来を拓けるのではと期待します。
2016年もよい年になりますよう、皆さまのご多幸を祈念して今年を締めくくりたいと思います。