2015/09/13

IoTで変わること、変わらないこと。

8月27日(木)19時~22時 於 電通ホールで開催のMarketing 4.0 次世代マーケティングプラットフォーム研究会(NMPLAB) 第5回総会に初参加しました。別記のとおり多彩な内容盛りだくさんで盛況のうちに終了。その後、今回の内容を今一度自分に置き換えて考えました。

 

<ビジネスモデルの革新>

企業活動の観点からいうとIoTとは、センサーやデータの分析により既存のビジネスモデルや業界、業種を超える取り組みのことです。日本は伝統的にモノ作りが経済の基盤になってきたので、ビジネス・産業・業界メディアの注目は ❝IoT❞ から インダストリー4.0❞ インダストリアル・インターネット❞ といった企業・業界横断的な製造インフラおよび国家的施策にキーワードが移行してきていますが、「ビッグデータの活用によりビジネスの枠組みを変える」という文脈や本質は同じ。目下のところ、消費者や製品の観点からはIoTが、企業間取引や製造工程の観点からはインダストリー4.0がキーワードになる傾向にあります。

 

それを体現・研究されているのが今回の登壇者達

いずれもイノベーターと呼ぶにふさわしい方々でしたが、その発言から今回の登壇者ではなかったソニーにも間接的に注目が集まりました。というのは、セーフィーはソニーグループのソネットが出資、Qrioもソニーが出資、ZMPにおいてはソニーモバイルコミュニケーションと自動飛行測量を手がける合弁会社エアロセンスを設立と、ソニーがIoTに積極的な姿勢が見えたからです。


しかしIoTを語るうえで不可欠の「変革」という要素は、ソニーにおいてはウォークマンを出したときのようなユーザー行動や世界観の刷新が起きるような大きなムーブメントと類する熱量になったときに、成立するものでしょう。

  

日本が世界に誇るソニーさえIoTの旗頭でないとすれば、ごくわずかな大企業や優秀な起業家でなければIoT活用は無理か、といえばNOでしょう。


いずれ個々の企業・企業人がビッグデータ分析により業務形態を変え、ひろく協業することになるだろうと思います。


そして本質的なIoTニーズは、モノづくり(ハードウェア)を伴わないプロフェッショナルサービス業にも浸透するでしょう。


<サービスの革新>

それを垣間見る例が、稲田さんが触れた、IoTによる通信教育の変革でした。

これまでの通信教育は、子どもの数に比例して教材が配られ添削スタッフが配備される必要(生徒数の増加=スタッフの増加)があったのですが、今やコンピュータ添削・データ分析とタブレット活用による教材配布および個別指導が可能になった。これにより、運営リソースのうちこれまで添削スタッフにかかっていた分を、付加価値の高い教材の作成やカスタマイズにシフトし、新たなビジネス価値(教材・指導のマスカスタマイゼーション=質と価値の向上)を生むことができる、というもの。

「教える」というサービスがIoTでモデル変革を起こす例です。

 

これに通じるのが、SAP馬場さんが触れた、アウトカムエコノミーへの再注目と、スペインのTeatreneu劇場が採用したPay Per Laughシステムの事例です。


アウトカムエコノミーとは、昨年のダボス会議でも取り上げられた、データ計測に基づきユーザーが求める需要に応える経済基盤のことです。 ❝インダストリアル・インターネット❞ により生産や供給の枠組みが変わり、消費者が求める結果を企業横断的に瞬時に生成して提供するビジネスモデルへの移行を意味します。

これを今日実現する例として挙がったスペインのPay Per Laughとは、急激な増税と減収に対抗すべくTeatreneu劇場で導入された、入場無料、1スマイル0.3ユーロ(40円強)の笑った分だけ課金するシステムです。座席にiPadを取り付け顔認識機能で笑顔をトラッキングして課金モデルを変えスペイン各地に広まったと言われています。


つまり、「笑いの見える化」「笑える分だけお支払い」という娯楽サービスのビジネスモデル革新も、IoTで可能になるといえます。


<本質を支える変化>

上記の遠隔教育でもお笑い劇場でも、ビジネスの根幹は「教える」「笑わせる」といった普遍的価値の提供から変わってない、ブレていません。

 

一方で ❝PR❞となると、企業がニュース情報を発信して記事化を促進する(ノンペイド、媒体費は発生しない)をPRと呼ぶのに対し、制作素材を伴う広告(ペイド、媒体費等が支払われる)にも「PR」と表示されており、PRと広告の線引きが実質的にかき消されています。これは、報道の信頼性の観点から問題視されるところですが、かといって広告はお金が動く偽装のPR活動で悪なのかというと、受け手からみたらペイドでもノンペイドでも価値ある情報であれば構わない、といったところでしょう。

PRの定義が状況による曖昧さを含み、一般の理解が浸透していないのが現状です。

 

しかしわたしは、PRの本質は広義においても狭義においても、

企業に即したニュースを生み出し認知理解を促進し、話題性を保ちながら、リスク管理・対処と連動して、企業価値を高める」活動だと思います。

ひと言でいえば「PR=成長のための情報発信」です。

その本質を支えるための時代に沿った変革が必要なのだと思います。

PRにおけるIoT活用の鍵は遠隔教育やお笑い劇場と同じく、データ分析、可視化、企業・業界横断的取り組みを骨子とする枠組み作りだと思います。

上記のペイドかノンペイドか、といった点を含めこのあたりはネイティブ広告の普及とともに熱い議論が交わされるところで改めてまとめたいと思います。

 

いずれにせよ、仮に起業家が100年続く会社を、メーカーが100年耐久するものを目指すなら、PRコンサルタントとしては100年後にも評価されるコミュニケーション事例を生み出すことを目指したいと考えます。

IoTはそれを実現する、本質を支える変化を生む動きといえるでしょう。


以上、NMPLAB第5回総会のテーマIoTをきっかけに社会と業界と未来について考えました。

いずれこうした社会の変容とともに、データ活用によるビジネスモデルの変化は一般化し、IoTというキーワードは消えるでしょう。

職業人としては、トレンドを把握する力とともに、キーワードに惑わされずに本質を貫く力を磨く訓練が必要です。

 

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